教室に戻るとさっきのことをずっと考えていた。


四限の数学はそのせいで授業内容が全く耳に入ってこない。


ぶつかった肩に無意識に手が伸びる。


なんかまだあの男子のぬくもり的なのが残ってる感覚がした。



思い出したらまた心臓が下の方からぎゅーって締め付けられた。


やば、私キモイ。ぬくもり、て。


我に返ってそれから心配になった。


私、汗臭くなかったかな。髪ボサボサだった?


思考の悪循環。考えれば考えるほど悪い方向に進む。


「……くら、朝倉!!」

「は、はい!」


思考の渦から急に現実に戻されて、勢いで立ち上がってしまった。


「ここの問題の答えは?」

「え、えと…」

「√2」

困っていたら後ろの席から答えを友恵が小声で教えてくれた。


「√2です」

「はい、よし。ちゃんと聞いとけよー」

て、ん、きゅー

口パクで感謝を伝えたら、友恵はノートになにかを書いた。


『チョコレート1箱』


……了解です。


前を向いて後ろに見えるように指で丸をつくった。


くそー、しくった。今金欠なのに。


放課後売店に友恵が好きな板チョコを一緒に買いに行った。


友恵の方をちらりと見る。うん、かわいい。


友恵は甘いものが大がつくほど好き。なのに小柄でかわいい。太らない体質なのかもしれない。


細いのに沢山おいしそうにたべる姿は男子の守りたい本能を刺激するみたい。だから友恵は結構、恋愛経験豊富だ。


「おばさん、チョコ1つちょうだい」

「はいよー。いつものね。120円」


私がお金を払って友恵が受け取る。


「これでチャラだからね」

「ふふん。また紅がしくったら私が助けてやるよ。報酬付きで」


さっそく食べて口にチョコレートついてるやつが、かっこよさげに言ってもかっこよくないし。かわいいだけだし。



ナイッサー!!


教室に戻るのに渡り廊下を歩いていると体育館からから部活の掛け声みたいなのが聞こえた。


「頑張ってんねー」


同意を求め、友恵の方を見るとなにか必死な感じで

「ねね、見に行こ!」


と言われた。そのまま引っ張られるみたいな感じで連れてかれた。

どうしたんだろ。