「雪姫っ!」



玄関のドアが開く音と名前を呼ぶ声。

勝手知ったる空人が部屋に来ると思った私は起き上がろうとした。

でも空人のが早かった。




布団に入って横になってる私を見た空人が青ざめるのがわかった。

「来るのが早すぎるよ」


笑いながら起き上がろうとしたのに空人が止めた。


「起きなくていいから。熱は?」

「ごめん。まだ計ってない」

答える前におでこに空人の手が触れる。

空人の手が冷たくて気持ちいい。



「いつから?かなり熱いんだけど?」

少し怒った口調で責められた。



「空人の手が冷たいからそう感じるんだよ。そんなに高くないと思うけど」

「……本当は昨日から熱あったんじゃないの?」

「ないよ。……多分」

言われてから考えた。



自分が気付かなかっただけで少しは熱があったのかな?

昨日は色々あり過ぎて自分の体調なんて気にする余裕すらなかった。

というか、楽しくてテンション上がってたからどっちにしても気付かないか。



なんて考えてるうちに机の引き出しを開けて体温計を取って渡してくれる空人。

「俺、正騎に電話してくるから雪姫はそのまま寝てろよ。すぐ母さんが来るからな」

「………」



空人が嶋村くんの名前を出した瞬間何も考えられなくなった。