「雪姫」



陸兄が私を引っ張って空人と嶋村くんから離れたところで話しはじめた。



「ごめん。そんなつもりじゃなかったんだ」

「…大丈夫だよ。わかってるから」

「…雪姫。もういい加減、誰かの彼女役とかしなくていいんだよ?雪姫に好きな人がいるなら…」

「陸兄。ごめん。もうこの話したくない」

これ以上何も聞きたくなかった。




なのに突然、中2の頃を思い出した。

私が弓道を辞めると言った時のこと。



あの時、陸兄に言われた言葉を突然思い出した。



"好きなものは諦めちゃダメだよ"



あの時、もしかしたら弓道の事だけじゃなかったのかもしれない……



この前も



"良かったね。嶋村くんと再会できて"




あの時から陸兄は気付いていたのかな
だからさっきわざとあんなこと言ったのかも……




なのに私は……





「雪姫、ごめんな」

またいつものように頭を撫でてくれる。

「でも、もう二度と自分であんなこと言うんじゃないぞ。誰かに言われたらちゃんと事実だけを言うんだぞ。わかったか?」

「…うん」

「…俺に出来ることはなんでもしてやるから何かあったら連絡しろよ」


いつもこんな私を心配してくれる陸兄。
頷くと自然に口が動いた。


「……ありがとう、陸兄」




最後に慰めるようにぎゅっと抱きしめられた。