「ん────っ!よく寝たっ」




私は、いきなりグーンと伸びをしだした目の前の男をジッと見つめた。


俗に言う……イケメンってやつですか?



猫みたいに大きくてつり上がってる目に、長いまつげ。
スッと通った鼻に、薄い唇。
髪の毛はワックスか何か使ってるのか軽く外へはねている。



思わずボケーと見とれていると、男はいきなり声をかけてきた。




「俺の名前覚えた?」



「え?うん?堤謙吾君でしょ?」



「そうそう!!えっと、君はー……」



「芹沢佳世(せりざわかよ)」



「へぇ……佳世ちゃんね」




いきなり『ちゃん』付けかよ……
まあ、いいけど。




「佳世ちゃんは、何か特技あるっ?」



「はい?」



「だからぁ、と・く・ぎ!」




わかった?と、首を傾げて聞いてくる堤謙吾。

わかったけど!!


いきなり何!?見合いじゃあるまいしっ。


でも、堤君はキラキラした目で返答を待ってるし……私は仕方なく答えた。




「空手…と…ピアノ」



「ほんとにっ!!?」



「う、うん?」




私が返答した途端、ズイッと身を乗り出してきた堤君にちょっと驚いてしまった。

一体なんなんだ、ほんと……