ー雛sideー



「あれ…。」



ツン、と鼻につく消毒液の香り。
パタパタと廊下を走る音で、目が覚めた。


どこだろう、ここ。
学校の保健室かな?



「雛、目が覚めたんだね。」


「夜空…?」


「うん、僕だよ。
ここは病院、雛は足を滑らせて坂から落ちたんだ。」



大丈夫?分かる?と。
わたしの手をとって、自分の頬に当てながら確認をしてくれる夜空。


この感触は夜空の頬で間違いない。この声も。



「ああ、待って。まだ起き上がらないで。
今お医者さんを呼ぶから。」



今、僕の母さんが雛のお母さんに連絡してもう少しで着くみたいだよ、と。
テキパキとナースコールで対応しながら夜空は教えてくれた。


今が何時頃か分からないけど、外から聞こえてくるカラスの鳴き声。

もう、夕方くらいかな。もしかしたらそれよりも遅い可能性がある。
芽衣も和華もなにも連絡出来てないし、心配させちゃってるかも。