やって来たのは美紅と佐和子共通の幼馴染、緒方一慶だった。
今朝、目覚める直前に夢に出てきたため、まだ夢の中なのではないかと疑いたくなる。
会うのは五年ぶりだろうか。無造作にまとめた栗色の髪に、少し鋭さを感じさせる切れ長の目。美しく配置された顔立ちは、神様の寵愛を一身に受けたといってもいいくらいに整っている。
その容姿は昔から有名だったが、五年の月日が彼に大人の魅力を備えさせ、男ぶりをさらに上げていた。
おかげで美紅は一慶を見つめたまま、そこから言葉が続かない。
佐和子と同じ歳の彼は美紅の初恋の人。心の奥深くで眠っていた恋心がむっくりと頭をもたげる。
三十二歳になった一慶が、見目麗しい姿で再び美紅の前に現れるなんて想像もしていない。ドクンドクンと大きな音を立てて鼓動が騒ぎはじめた。
「ちょっと美紅、大丈夫?」
「いきなりで驚かせたよな」
佐和子と一慶がクスクス笑う。
「……あ、うん、びっくりした」