「美紅をひとりにするのは私も心配なの。だから、ある人と一緒に住んでもらおうかなって」
「……え?」


美紅は目をまたたかせた。言葉は理解できるのに真意がまったく掴めない。誰と暮らせと言うのか。
それに、そんなにも自分という人間は頼りないのか。


「そろそろ来る頃かな」


佐和子が腕時計を確認したときだった。部屋のチャイムが来客を知らせて鳴り響く。
午前八時。宅配便が届くような時間ではない。

佐和子は「はーい」と軽やかに返事をしてインターフォンのモニターに向かった。


『俺』


ひと言だけ発した相手の声が聞こえ、訪れたのが男だとわかる。

まさかとは思うけど、その人と住めって言う気じゃないよね……?

胸騒ぎがした。


「ね、おねえちゃん、誰をここに呼んだの? 誰が来たの?」