「結婚式は? 挙げないの?」
「まずは入籍してから、ゆっくり準備していこうかって話してる」
佐和子の口調から、すぐにでも幸司と一緒に暮らしたいのがひしひしと伝わってくる。幸せなのはなによりだ。
「本当におめでとう」
「ありがとう。美紅にそう言ってもらえるのが一番うれしい」
佐和子はやわらかく微笑み、再び箸を持って食べはじめた。
ここに一緒に暮らすようになって二年。美紅は佐和子の店で働いているため、それこそ公私共にお世話になってきた。頼りがいのある姉のおかげで、なに不自由なく暮らしてこられたのだ。
自信を持てるのは料理だけ。ひとり暮らしに憧れはあるものの、突然そのチャンスが巡ってきたため、じつを言うと期待よりも不安のほうが大きい。
二十七歳にもなって情けないが、それは佐和子には内緒だ。
「でもね、美紅」
再び口を開いた佐和子を見る。