どれも在庫があるため、明日には搬入が可能だという。そのうえ一慶は追加料金を払い、明日、美紅のベッドの運び出しまで了承させるという用意周到ぶりを発揮した。
水曜日の明日、佐和子の店は定休日のため美紅は連休である。
大口のお客のわがままに、家具店も『喜んでそうさせていただきます』と喜色満面だった。
店を出て、休憩がてらに近くのコーヒーショップに入る。
美紅は甘さたっぷり、ホットのキャラメルマキアート、一慶はホットのブラックだ。
「昔から美紅は甘いものが好きだよな」
「いっくんは昔から甘いものが苦手だよね」
そう言い合って、互いに笑う。
美紅が中学生の頃に手作りスイーツに凝った時期があったが、一慶はまったくと言っていいほど食べなかった。かわりに晴臣が一慶の分まで食べたものだ。
「キャラメルの香りがいいし、おいしいんだよ? ひと口飲んでみる?」
そのすぐ後にうっかり発したひと言を後悔した。一慶が美紅からカップを奪って飲んだのだ。それも、美紅が口をつけたのと同じ場所から。