一慶の双子の弟、晴臣は社長兼インテリアデザイナーとして活躍しており直営店も構えている。そこで買えばいいのにと思ったのだ。
「ハルのは買わない」
「なんで?」
「なんでも」
なぜか意固地になって首を横に振る。
一慶と晴臣の仲は良好なほうだと思っていたのは美紅の勘違いなのか。
一慶は子どもの頃からやんちゃなタイプで、いたずらを仕掛けたりするのが大好きだった。それを宥めるのが晴臣の役目。いつだったか彼らの父親所有の別荘に遊びに行ったときに、美紅は一慶が作った落とし穴にはまったことがあったが、そのときも双方の両親に謝ったのは晴臣だった。
同じ歳なのに、晴臣はどこか落ち着いた風情があったものだ。
「これ、なかなかいい寝心地だな」
ベッドコーナーを回っていた一慶がキングサイズのベッドにゴロンと寝転がる。
「こちらはフランス製でございまして、スプリングは世界最高水準を満たしたものとなっております。ここのカーブのデザインが……」