てっきりタクシーにでも乗るのかと思いきや揃って駅まで歩き、そこから電車移動をはじめた。一慶は、行き交う人たちのファッションを見たいと言う。

十月の空気は、すっかり秋の匂いがする。外を歩くにはとても心地いい。

一慶は電車に乗れば車両内の人たちを観察し、街を歩けばすれ違う人たちを興味深く眺めた。

でも、一慶自身も同様に注目されていることには気づいていないみたいだ。街を歩くどの人よりも目を引く容姿は、通りすがりの人が思わず二度見するくらいに美しい。

Vネックの白いカットソーにネイビーのテイラードジャケットを羽織ったごく普通の格好をしているのに、どうしてこうも洗練されて見えるのだろうか。イケメン俳優かモデルかと、コソコソと囁き合う声が聞こえてきた。

……そうなるのも当然だよね。悔しいくらいにカッコいいんだもん。

きっと隣を歩く美紅の姿は、みんなの目にすら入っていないだろう。存在ごと霞んでしまいそうだ。

一慶がまず足を踏み入れたのは輸入家具を扱う専門店だった。彼のマンションは、まだ住むためのものが揃ってないという。


「ねぇ、いっくん、家具を買うならハルくんがデザインしたものを買ったらどうかな」