一瞬だけぎゅっと抱きしめた一慶は美紅を解放して、ポンと頭を軽く叩く。小さな子供を相手にするような仕草だ。


「す、少しは成長――」
「してるって?」


先を越され不満が募る。一慶には昔からずっと子ども扱いされっぱなしだ。
美紅が密かにドキドキしているなんて、絶対に気づいていないだろう。……気づかれても困るのだけれど。


「じゃ、行くぞ」


美紅の腕をむんずと掴み、玄関へ向かう。


「私も行くの?」


まるで捕えられた子猫同然。軽々と引っ張られ足が出る。


「当然。飴玉あげるからおいで」
「だから子ども扱い!」
「はいはい」


クククと笑いながら軽くあしらわれ、美紅は結局一慶にあっさりと連れ出された。