結婚を意識した今のふたりは、きっと世界中のどのカップルよりも幸せに違いない。


「ごちそうさま」


そんなふたりが羨ましくなる。


『だからって今日すぐに出ていかなくてもいいんだからね? ゆっくり準備していけばいいから』


佐和子はそう念押しをして電話を切った。


「どうだった?」


美紅の電話の様子から結果がわかっているため、一慶は自信満々だ。


「明日には幸司さんが越してくるって」
「だろう? 新婚の邪魔をしたいか?」
「……したくない」
「じゃあ決まり。よろしくな、美紅」


いきなり手を引かれたかと思ったら、そのまま一慶に体がぶつかる。どういうわけか抱きしめられたのだ。不意打ちだったため声も出せなかった。
さらに頬同士を擦り合わされ、心臓が飛び上がる。