「ちょっと待って。おねえちゃんにちゃんと聞いてから」
一慶を信用していないわけではない。でも、いくらなんでも今日明日から一慶と暮らすなんて、あまりにも唐突過ぎる。
美紅は自分の部屋からスマートフォンを持ってくると、すぐに佐和子に電話をかけた。自宅を出てから三十分は経ったから、ちょうど店に到着した頃だろう。
『なに、なにかあった?』
ワンコールで出た佐和子は名乗りもしなかった。
「幸司さん、明日にでも引っ越してくるって本当?」
『あぁ、一慶に聞いたの? じつはそうなの。しばらくは美紅も一緒に住めばいいやって安易に考えていたんだけどね。一慶が部屋を提供してくれるって言うから、美紅には突然の話になっちゃって』
本当だったようだ。
一慶は美紅の前で〝な?〟という顔をした。言った通りだろう?と。
『彼から、早く一緒に住みたいって言われてるの』