幼い頃からお互いの家を行き来していたため、遊ぶ機会も多かった。
とはいえ、一慶や佐和子と五歳離れている美紅は、もっぱら後を追いかけているだけだったが。

一慶には双子の弟、晴臣(はるおみ)がいて、父親が経営するインテリアデザインの会社を継いでいる。
いっぽうがファッションデザイナーなら、もういっぽうがインテリアデザイナー。どちらも今をときめくデザイナーの双子である。


「ごちそうさま」


すべて平らげた一慶が箸を置く。


「久しぶりに美紅の手料理を食べたけど、やっぱりうまいな。日本に帰ってきたって実感する」
「腕が落ちたって言われなくてよかった」


父親が経営する不動産会社を母親も手伝っていたため、両親とも忙しい毎日。代わりに食事の準備をしていたため、美紅の料理の腕前が上がるのは必然だった。
なにより佐和子にただひとつだけ勝てる分野だったため、必死だったのもある。


「だけど、いっくん、恋人いないの?」