意地悪な顔をして言う一慶に頬を膨らませると、彼はその頬をツンと突いた。ぷっと空気が漏れて頬がぺちゃんこになる。
「公園の遊具から落ちて大泣きしていたのは誰だっけ? 野良犬の頭を撫でようとして、逆に追いかけ回されたのは? 探検しようとした俺にくっついてきて迷子になったのは? それから」
「もうわかったからっ」
次から次へと恥ずかしい過去を持ち出され、聞くに堪えなくなる。どれも美紅にとっては黒歴史だ。
一慶はクククと肩を震わせていた。
「じゃ、私は仕事に行くからね。あとはふたりで話し合っておいて」
「えっ、おねえちゃん!」
椅子に置いていたバッグを取り、佐和子がひらりと身を翻す。美紅が呼び止めたものの、「仲良くやってね」と意味深な笑みを残して出かけてしまった。
いつもなら一緒に出勤するが、今日の美紅は公休日だ。
「仲良くって言ってるぞ? よろしくな、美紅」
頭をポンとされ、頬が熱くなるからかなわない。
「本気なの? 私と一緒に住むつもりなの?」