美紅はこぼれ落ちそうなほど目を見開く。
そんなことがあるだろうか。にわかには信じられない。
両親がひとり暮らしを反対した大きな理由のひとつが、男の人を連れ込んだら困るというものだったからだ。
その点、佐和子は信頼が厚く、しっかりしているから大丈夫だろうと美紅がここに住むまではひとりで暮らしていた。
「むしろ美紅がひとりになるのは心配だから助かるって」
「……そうなの?」
両親にそこまで信頼されていないとは。そんなに頼りないのかと愕然とする。
たしかに、しっかり者の佐和子に比べたら危なっかしいかもしれないが。
もう二十七歳なんだから平気なのに。
そんな不満から、つい唇が尖る。
「美紅は俺と一緒に住むのがそんなに嫌なのか?」
「そ、そうじゃなくて。私ってそんなに頼りないのかなって」
にじり寄ってきた一慶から一歩退く。
「美紅は危なっかしいからな」
「ひどーい」