「……私がいっくんと?」
あまりにも急展開すぎて頭が追いつかない。
ふたりが揃ってうなずく。
「え、でもでも、いっくん、仕事はどうするの?」
一慶の活動拠点はイタリアのはず。いつだったかファッション誌でミラノかどこかのおしゃれな街で暮らす様子が紹介されていた。イッケイ・オガタのブランド本社もあちらにあるのではないのか。
「都内に日本の一号店を開店させる予定でね」
「そう、なんだ……」
一慶がしばらく日本にいる。
それは美紅の心を少なからず揺らす。
「でも、いっくんと一緒に暮らすなんて、お父さんやお母さんに知られたら」
絶対にただでは済まされないだろう。いくら幼馴染とはいえ大人の男だ。同居なんてダメだと言われるに決まっている。
「心配しないで。お父さんたちの了解もとってあるから」
「え? いいって言ってるの?」