『キャア!! 今、目合った!!』

『違うよ! 今のはあたしと……っ』


……煩い。


「あ~ん……もう本当に大好き! あのクールビューティ堪んないよね!」

「うん! あの冷たい視線で見つめられてみたぁい!!」


……煩い煩い煩い煩い!!

ばっかじゃないの?!!



昼休みの教室。

あたしは机に突っ伏していた上半身を起こして、隣を見た。


隣の席に座り、一部の女子達の熱い視線と鬱陶しい声を集める宮城は、あたしの睨むような視線を気にする訳でもなく、伏せた視線を手元の本へと落とす。

手元にある厚い本の表紙には「新撰組」の文字。

どうやら歴史の本らしい。


「……ねぇ、煩いんだけど」


あたしの声に、宮城はようやく本から視線を離す。

そして、あきらかに迷惑そうな視線をあたしへと向けた。


「……俺は本を読んでるだけなんだけど、その何が煩かった訳?」

「宮城じゃないよ。……あの女の子達。さっきからドアに張り付いて宮城の事見てるじゃん。ハート型の目でさ。

ってゆうか気付いてたでしょ? 何とぼけてんの? どうにかしてよ」

「あれは俺のせいじゃない。……というか、俺の事で騒いでたなんて今知ったよ」


一瞬だけ視線を女子達に向ける宮城。

その視線に、またしても黄色い声がヒートアップしたのは言うまでもない。


『今!! 今、絶対あたしを……』

『だからあたしだって……』



そんな声に、あたしは大げさなほどのため息を机に落とした。


本当ならあたしだって今頃先輩を見ながらキャーキャー言ってたハズなのにっ!!

先輩の爽やかな素敵な笑顔をもらってたハズなのにっ!!!

くそぅ……



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