「…どうせ、嵐さんのことでしょ」
鮎斗くんは私を無視して、ぽつりと言った。
「え、なんで…」
しかも名指しで当てるなんて。
「嵐さんは優しいようでどこか冷たいからね。あんまり深く踏み込まないほうがいいよ」
へええ、初耳。
でも、分かるかも。
嵐くんは甘いルックスをしているが、怒った時は怖い。
なんというか、怒鳴ったりする怖さではなくて、ひんやりと冷たいっていう感じの怖さだ。
さっきの怖さは、尋常じゃなかった。
はじめて嵐くんが喧嘩をする人なんだって強く感じた。
確かに、むやみに関わらないほうがお互いにいいかもしれない。
「実はね、嵐さんの彼女は、だいぶ前に病気で亡くなったんだ」
と鮎斗くん。