でも、私も言える立場じゃないけど。



私だって彼氏ができたことは一回もないし、なんなら好きな人さえできたこともない。去年の修学旅行の時もみんなが好きな人のことを話していたりするのを聞いているだけだった。



「そうなんだ」




「もー、ほんとつれないなぁ」




だって顔がカッコよくて何がいいの?って思っちゃうし。結局は中身でしょ、中身。




「私は目の保養だけで十分」




「むー、海華って不思議だねー。まあそこも好きだけど」




朱里がむっとほっぺたを膨らませる。なんだか子供みたいでかわいい。



とか話してると、鐘がなり先生が入ってきた。



朱理は「じゃあね!」と言って急いで自分の席に戻っていった。




「今日は転入生がいる。入って来い」




先生に言われて、1人の男子が入って来た。




…すごく綺麗な顔つきの男子だったから、私は思わず彼に見惚れた。




雪のように真っ白でサラサラな肌に、スッと伸びた鼻筋、薄くて真っ直ぐ結ばれた唇。睫毛は私なんかより全然フサフサしているし、とにかく長い。




身長はそこまで高くはなかったけど、なぜかすごく威厳があるというか…なんだか怖かった。



簡単に言えば、

黒髪で、何より、ー冷たい。




そんな人だった。