翌日、私はあまり眠れずに朝を迎えた。
私は昨日の夜たくさん考えて、逃げ出さずに“ちゃんと別れるなら別れて”と伝えるつもりだった。
飛鳥に渡してもらったものもまとめて持ってきた。
別れるんだとしたら、持っていられないだろうから。
かといって私が捨てられるわけじゃない。
自分が捨てるくらいなら、飛鳥に捨ててもらったほうがいい。
もし勘違いだったら…それだったら、いいんだけど。
飛鳥は待ち合わせより10分遅れてきた。
「ごめん。電車が遅れてて」
と謝る飛鳥。
嘘つき。今まで飛鳥はどうせあの女の人といたんでしょ。
と思ったが、私はそのことは黙ったまま
「ううん、私も遅れちゃったから」
と無理やり笑顔を作った。
だって、もしかしたら今日が最後のデートかもしれないじゃん。
だったら、楽しんでおきたい。
「今日はここに行こうと思ってるんだけど、どう?」
と飛鳥。
「うん。楽しそうだね」
そこは、昨日、飛鳥の誕プレを買った場所。
「海華なら気にいると思って」
と飛鳥は笑った。
その笑顔がいつもと違うのに、私は気がつけなかった。
あのときそれに気づけていれば、そして下らない嫉妬をしていなければ。
私はそれを、今でもずっと後悔している。