…ん?
一向になにも起きない。いや、この間おかしい。キスするんだったらどんだけ躊躇ってるのかって感じ。
さっきとの違いを強いて言えば、ちょっと私の右手に何かが触れたくらいかな。
でもどうせ気のせいなんだろうな。
「はい、目開けて」
あ、やっぱりキスじゃなかったんだ。
ちょっと恥ずかしく、そして残念に思いつつ、私はそっと目を開ける。
「右手」
と飛鳥に言われ、少し違和感を感じた右手に目をやる。
「わ…」
右手首には、キラキラと青色に輝くブレスレットが光っていた。
え、なにこれ超可愛いんだけど。すき。
きっと私の名前が“海華”だから海の色を買ってきてくれたんだろうな。
「海華、こんな安っぽいので悪いけど…これでよかったらお守りにでもして、受験頑張れよ」
飛鳥が耳の後ろを掻きながら言った。かわいい。
「あすか…ありがとう!」
私は勢いよく飛鳥に抱きついた。
「わっ」
飛鳥はバランスを崩したのか、勢いよくソファーに倒れこむ。
「海華…ずいぶん今日は積極的だな」
確かに言われてみれば、私が飛鳥の上に覆いかぶさっているような図になってる。
ぎゃあああああ。
「え…飛鳥のえっち!」
「仕方ないし、男はえっちなもんなんだよ」
なにそれ、いやらしい。