「ま、でも付き合えて本当に良かったよ」



とにこりと微笑む谷川さん。



キーンコーンカーンコーン。



「なんてこと、もう帰りじゃないの!私今日は急いで帰らなきゃいけないの。じゃね!」



と急いで走り出す谷川さん。



「ごめん、私も蒼真くんと会う約束してるから先行ってるね!」



木花さんまで…。



ま、でも一緒に帰れないからよかったのかも。



いや、正確に言えば途中までは帰れたかもしれないけど、飛鳥が後ろか前にいてそれで喋るってのはなかなかきついと思ったからさ。



私は教科書やペンケースなど諸々持って、ゆっくり教室まで歩いていった。



***



「よ」



いつもの待ち合わせ場所で待っていると、飛鳥がブォンブォンバイクをふかしながらやってきた。



「飛鳥…!」



私はぶんぶんと手を振る。



飛鳥はバイクを停めると、ふうと息を吐いた。



「今日遅かったね。何してたの?」



と私は飛鳥に尋ねた。



「いや、ちょっと仕事が長引いて」



と飛鳥。



そっか、飛鳥はもう働いているんだもんね。



まだ20代前半だってことは…、大学には行かずに日向ちゃんを養うために就職したんだ…本当、しっかりしてるな。