程なくして鐘が鳴り、私たちは慌てて自分の席に座った。
「今日は課題を出してもらおうと思ったが、やめた。来週に持ち越しだから、きっちり分かるまでやっておくんだぞ」
え。
さっき慌てて写させてもらったのに。
その努力は無駄でしたか…。
私はがっくりと項垂れた。木花さんを見ると、彼女も同じことを思っているのだろう、目がずっと開いたままだ。
あ、違うな。
もう木花さんは夢の世界に行っているんだな。
だって全く動かないもん。
私は心の中でくすっと笑った。
***
「きはなさん、木花さん!」
「柚花!」
私と谷川さんは化学の授業が終わると、木花さんを起こしに行った。
「んー…」
気持ちよさそうに寝ている木花さん。
ぜんぜん、起きる気配がない。
「ほら、蒼真がいるよ!」
「え⁉︎」
木花さんは勢いよく起き上がり、きょろきょろと辺りを見回す。
「なんだ、いないじゃん…」
「蒼真ってのは柚花の彼氏ね。いつもこうやれば大体目を覚ますの」
木花さんをまるっきり無視しながら、谷川さんが言う。
「へええ…蒼真さん、って言うんだ」
なんだかカッコいい名前だなぁ。