大好きな暁斗が私に身を任せて、安心したような面持ちになって休んでくれることが。
肩越しに、暁斗の温もりが伝わってくる。
少し目線を横に向けるだけで、暁斗の少し茶色がかったサラサラの髪と、陶器のようにきめ細やかに見える肌がある。
見るたびにさらに心臓の音が大きくなってしまうから、目を閉じればいいのに、私。
だけど暁斗が好きすぎて見ずにはいられなかった。
瞳を閉じてリラックスした表情は、決して学校では見せない暁斗。
――私だけが知っている暁斗なんだ。
「やっぱり、花梨に寄りかかると落ち着く」
「そっかー」
「俺がこんなことをするのは、花梨だけだよ」
眠くなってきたのか、目を閉じてどこか覚束ない声で言う暁斗。
「花梨だけだよ」という言い方が、彼が私を選んでくれたように思えて嬉しくてたまらなくなってしまう。
――だけど。
「うん、よかった」
何気ない口調を装ってそう言った私。
年頃の男女がこんなに触れ合っているというのに、暁斗はまったくの平常心のように見えて。
私だけが、ドキドキしているみたいで。
それが私を、少しだけがっかりさせていた。