でも「好きだ」とか「付き合わない?」とか、恋愛じみたことは一度も言われたことがなくて。

 これだけ長い間、一緒にいるのにだよ?

 少しでも何かを思ってれば、1回くらいはそんな風なこと言ってくれるよね、普通。

 だから暁斗はやっぱり、私を「気の許せる幼馴染」って思っているだけだと思う。

 友達の沙也加は、「暁斗くん、絶対花梨のこと好きだって! そういう風にしか見えない!」っていつも言っているけどさ。

 幼い頃から変わらない関係だから、いまいちそうは思えないんだよね。


「じゃ、そろそろのんびりしよう」


 そう言うと、今までテーブルをはさんで向かい合わせに座っていた暁斗は、私の隣に来た。

 至近距離の暁斗。

 部屋を満たしていた暁斗の匂いが、一層濃くなった。

 心臓の音がどんどん大きくなって、自分の頭に響いてくる。

 彼に聞こえないかなと、本気で心配になっちゃう。

 気取られない様に無表情を装っているつもりだけど、顔赤くなってないかなあ。

 暁斗は私の方を見た。

 目と鼻の先に、テレビに出てくるアイドルのように整った彼の顔がある。

 しかし、緊張で息が止まりそうな私に対して、彼からは一切の動揺は見られなかった。