そんな私がかっこいいて言っていたことを本人が知ったとしても、「ふーん、誰だっけ?」くらいしにか思わないだろう。
クラスのみんなだって、私が瞬くんの名前をあげたことよりも、瞬くんってやっぱりイケメンだよねえという話の流れになっている。
この感じなら、きっとこの場限りの話に終わるだろう。
とりあえず、暁斗の名前を出さずに済んでよかった……と、私は心の底から安堵したのだった。
その後も何回かジェンガをやった。
負けた人が付き合っている恋人の名前を言って冷やかされたり、意外な告白があってなんとその場でカップルが誕生したりと、大いに盛り上がった。
そしてゲームが終わってジェンガを片付けている最中、沙也加が私の方へ寄ってきて小声でこう言った。
「花梨。咄嗟に瞬くんの名前を出して、本命を誤魔化したってことだよね?」
「う、うん……。瞬くんには申し訳なかったかなあ」
私が不安になってそう言うと、沙也加は首を横に振る。
「いやいやー、あんだけモテ男の瞬くんなら、罰ゲームで名前を言われたことくらい気にしないっしょ! 花梨、ナイスなごまかし!って思ったよー、私」