それなら瑠璃はたぶん引き下がらないだろうし。

 瑠璃が諦めざるを得ない理由が、そこにはあるはずなんだ。

 彼女はなぜか、私を忌々し気に睨みつけた。

 でもなぜか、嫌な感じはしなかった。

 あからさまに見せつけられた悪意は、どこか冗談めいているようにも見えた。


「腹立つから絶対に言わない。暁斗に自分で聞いてみればー?」

「う、うん……」


 この感じでは、食い下がったところで瑠璃は絶対に口を割らないだろう。

 知りたいなら、本当に暁斗本人に聞くしかない。

 でも、人を振った理由なんて繊細なこと、聞く気は起きなかった。

 ――それにしても。

 瑠璃は勇気を出して、素直に暁斗に自分の気持ちを伝えている。

 報われないかもしれないと思いながらも。

 それに比べて、私は。

 私はずっと。

 暁斗の気持ちを勝手に想像して、怖がって、自分の想いから逃げ続けている。

 こんなんじゃ、ダメだ。

 ――ダメなんだ。