あの切なそうな面持ちの意味はわからないけど……。

 私はやっぱり、暁斗の本物の彼女にはなれそうもないな……。


「いつまでニセモノの関係を続ける気なの?」


 不意に教室内に、かわいらしいけれどどこか苛立ったような声が聞こえてきたので、私ははっとして声のした方を向く。


「瑠璃……」


 いつの間にか、教室内には瑠璃がいた。

 こうして顔を合わせてはっきりと会話するのは、遊園地以来初めてだった。


「私は……私だって……!」


 幼い頃からの暁斗への想い。

 ニセモノの恋人同士となってからの一年間。

 最近の私たちを取り巻くさまざまな出来事。

 そして、たった今「私は暁斗の恋人にはなれない」と改めて思ったこと。

 いろいろなことが思い起こされて、私は気が付いたら落涙していた。

 堪えようとしても、どんどん涙が溢れていく。

 そんな私を見ても、瑠璃はまったく動揺した素振りはなく、腕組みをして厳しい顔をして私を見ていた。