ってか瞬くん、さっきは思いついたドリンクの試飲を私たちに頼みたいって言っていたのに。

　嘘じゃないの！

　やたらと私の背中を押してくる瞬くんが、この飲み物を無理やり私たちに飲ませようと企んでたってことみたい。

　どうりでニヤニヤしていたわけだ……。


「これ確か、あいつが考えたうちのクラスで出してる飲み物だよな」

「う、うん。そうだねー。すっごく売れてるんだよ」

「カップルで飲むってやつだよな」


　売り上げの話で誤魔化そうと思ったのに、暁斗がこの飲み物のコンセプトについて言ってきたため、私は口ごもってしまう。

　に、ニセカップルの私たちが、人がいないところでこんなの飲めるわけないよ。

　いや私は飲みたいけど、暁斗はあまり気が進まないだろうし……。


「あはは、なんだろねー、瞬くんったら。おいしそうだから、私ひとりで飲もうかなー」


　やけに明るい声音でそう言いながら、カップに手を伸ばそうとした。

　――すると。


「待ってよ花梨。なんでひとりで飲むの？」

「えっ……？」

「ふたりで飲むやつなんだろ、これ」