昔、暁斗が好きと公言してからは、所かまわず猛烈にアピールしていた彼女の姿が蘇える。
高校生になっても、恋愛に積極的なままなんだ……。
と、羨ましくなってしまった。
「そう?」
暁斗は窓の外を見ながら興味無さそうに言う。
自分のイケメン度については、常に無頓着な暁斗だ。
しかしそんな彼のことなど気にした様子もなく、瑠璃はじっと彼を見つめる。
「暁斗、今彼女いるの?」
「……え! あ、えっと……」
焦ってしまう私。
――私が彼女だよ。
暁斗のことを考えれば、すぐにそう言うべきなんだろう。
だけど、いまだに暁斗を好きかもしれない瑠璃に向かって、そんなことは言いづらかった。
だって自分はニセモノの彼女だから。
なんだか瑠璃を騙しているような気がして。
――しかし。
「瑠璃ちゃん、ざんねーん! 暁斗の彼女は花梨だよーん。ふたりはクラス公認の相思相愛カップルでーす!」
沙也加が茶化すように、しかしはっきりと大声で言った。
鋭い沙也加はきっと、瑠璃が暁斗を狙おうとしたことに気づいたんだと思う。