おでこも、視界も、にじんでいく。

やっぱりさっきの、涙か汗かわからないな。



わかってなかった。


白雪組がどれだけ毒を盛っていたのか。



こんなに痛かったっけか。




「小学生のときも、中学生のときも、そして今も。何度苦しめばわかるんだ」




父さんの顔ですら、もう。

見えない。


何もかもわかる気がするし、何ひとつわからない気もする。




「……とんだ大馬鹿な娘だ」


「はっ、」




ずっとわからなければ、バカなフリをして笑えたの。




『ねえねえ! あたしもいっしょにあそびたい! なかまにいーれーてー』

『うん! あそ』

『やーだー。ひとみちゃんはおうちがやくざ? だからあそんじゃダメだっていわれたもん』

『わたしもいわれた!』

『よそにいってよ。 ひとりでもへいきでしょ?』



小学生のときも。

疑いはなかったし、平気だってうなずいた。




『ぎゃははっ!』
『きーもっ』

『ひぃっ……! もう、や……っっ』

『ちょっとあんたら! ダサい真似して……』

『やば』
『ヤクザの』

『やめて……。し、白雪さんやめてよ!!』

『え……?』

『余計なことしないで!』

『なんで、いじめられてるあんたが、そんな、』

『白雪さんとはちがうの! そっちの世界の人には、わからないよ……っ』



中学生のときだって、そう。

ちょっとした出来事のはずだった。



気づいたら、被害は大きくなっていって。

あたしがすべての責任をこうむって。

そのたびに嘔吐して、父さんが迷惑がって。


最終的に、あたしはカゴの中の鳥。



こんなオチってない。