廊下を曲がる寸前、手前のふすまが引かれて。
なんということでしょう。
最悪なタイミングで、赤羽くんと鉢合わせてしまったじゃないですか。
あらびっくり。こんな偶然、いらねぇわくそ。
「な、なん……なんで、こいつが!? それに、そのスーツ……!」
「それはこっちのセリフです。やはりさっきのバイクは……」
魁運が混乱してるのがわかる。
そうだよね。こいつがいると思わないよね。
でも、今は、ワケなんかどうだっていい。
「警告です。ひとみ様をお放しください」
あれは、獲物を狩る目。
どんどんドス黒く、尖っていく。
そうやって、また、大事な大事な赤い糸をえんがちょってするんでしょ。
あたしのためにと言い張って。
二度もうまくいくと思うなよ!
あたしたちは切っても切れない運命なんだよ!
「よくわかんねぇが……てめえに従う義理はねぇ」
「逃げよう魁運!」
方向転換しようと、魁運のかかとがきゅっと鳴る。
その拍子に、ズボンのうしろポッケに入れていた小瓶が、するりと滑った。
「あ、やべっ……!!」
小瓶を拾い上げる隙に、あの黒い目が迫り来る。
「放さないなら、力づくで放すまでのこと」
「魁運、うしろ!!」
「くっ、」
さっすが魁運! 間一髪のところで赤羽くんの腕を止めた!
しかもうしろを向かずに!
かっこいいからもっとぎゅーってしちゃう! ありがとうのぎゅーもしちゃお! あ、首しめるとこだった。てへ。