言葉を奪うように唇が重なった。
焦がれた息が舌を這う。
ちっともやさしくないのに欲してしまう。
脳が溶けても、きっと止まれない。
「はっ、は、……ごめん、俺」
「っ……」
「たぶん、ぜったい、離してやれねぇ」
「……ん」
それがいい。
そうじゃなくちゃ、あたし、呪っちゃいそう。
「ここから連れてって、魁運」
もう、離さないで。
「ああ。帰ろう、一緒に」
「うん、帰……ぅわっ!?」
大きく頷いたと同時に、体が宙に浮いた。
お、お姫様抱っこだ!!
おとぎ話でハッピーエンドのときに見るやつだ!!
あたし、お姫様扱いされちゃってる!? やだ好き! 羽のような軽さじゃなくてもこれがあたしの重さだって受け入れてね!
「しっかりつかまってろよ」
「か、魁運、逃げ道知ってるの?」
「繭たちが……仲間が、がんばってくれたからな」
仲間。
あぁ、なんていい響き。
イケボでさらに聞き惚れちゃう。
離れている間に何があったのか知らないけどね、魁運がうれしいと、あたしもうれしいよ。
「よっしゃ行くぞ!」
「うん! 連れ去っちゃってダーリン!」
魁運は勢いよく走り出した。
騒がしい方向をきれいに避け、長い回廊を進んでいく。
あたしを連れて塀を乗り越えるのはむずかしいから、室内を突き進むしかない。
迷いのない足取り。
本当によく調べてきたんだな……。
あたしでさえ、まともに間取りを覚えていないのに。
ちゃんと覚えてるのは、自分の部屋と父さんの書斎くらい。
そうそう、この角を曲がると、ちょうど書斎に……。
「では、ぼくは一度、ひとみ様の部屋に――ッ!?!?」
「しまっ……!? えっ……は!?」
まじかよ。