なあにが「寝ていろ」だ。

ごめんのごの字もなければ、気遣いもなし。


父さんの顔が目に浮か……ばない!



軟禁生活を送るようになってから、父さんと顔を合わせるのは、きまってつぅちゃんと交流する前後。

書斎に呼ばれ、つぅちゃんへの執着を聞かされ、終わり。



父さんがどんな顔をしてコレを書いたのか、はっきりと正解を出せるほど一緒にいなかった。


今も顔を見せずに、文面で片づけようとしてる。

ひどい話だよね。



そんなんだから、娘のあたしも、ひねくれるんだ。


じごーじとく!




「父さんに伝えて」


「へ?」


「いつまでも夢見てな、ってね」




くしゃっとメモ用紙を握り締めた。


あたしの殺気に当てられ、兵吾郎と赤羽くんの握力が弱まる。

その隙に、力いっぱい手を払い、拘束を解いた。




「安心して。逃げないから」


「ほ、本当ですねお嬢……?」


「うん。まだ、ね」


「お嬢!!」




そう、まだ。


今はそのときじゃないってだけ。



家出の難易度が高くなったなら、計画を練り直すのみ。


やってやるぜ!

あたしに不可能はなーい!




「で、では、俺は、組長に報告してまいります」


「あ、兵吾郎」


「はい、なんでしょう」


「看病、してくれたんだよね? それについては感謝してる」


「……それについては、ですか」


「なに。文句あんの?」


「ないです! 早く元気になってくださいね。そのおかゆ、ちゃんと食べるんですよ?」




おかんか!