「コレが壊れて困るのは、そっちのほうでしょ」




そっちがその気なら、あたしだって奪うよ。

今は不利でも、また逃げたときに有利になるように。


現在地をひた隠しにするし、すぐに襲いに来れないようにかく乱させる。


大いに困ればいい。



あたしはけして屈しない。




「そう、ですね……。非常に困ります。すべてはお嬢のために、」


「またそれ? 聞き飽きた」


「お嬢……」


「ひとみ様、聞いてあげてください。ぼくたちは常に位置情報を把握し、いつでもひとみ様を連れ去ることができたんです」


「……ですが、それをしませんでした」




カッターの刃を投げつけてきたり、チンピラを雇ったり、レーザーガンで撃ち抜こうとしたりしてきたのは、ノーカン扱い?

連れ去る前のお遊びってか? きっつ。


そのせいで何度、魁運が傷ついたと思ってんだこんにゃろー。




「一度、組長と共に永鳥家の神社へまいりましたが、連れ戻しに動いたのはそれきりです」


「えっ」


「ぼくが山に行ったのは、あくまでひとみ様の安否確認が目的でしたし」


「え……あの、え……??」


「お嬢、どうされました?」




どうされました、じゃないよ兵吾郎!

耳を疑う内容を、さらっと言ったよね!?




「永鳥家に来たの!? いつ!?」


「9月初旬です」


「めっちゃ前じゃん!? 家出初期!? うそでしょ!?」


「本当です。永鳥家ご当主とその息子にお会いし、説得に失敗。やむを得ず、組長は様子をうかがう選択をいたしました」


「ち、ちなみに、白雪組ってことは……」


「最後に明かしましたよ。それでもなお、相手方は引きませんでしたが」