予想よりも早く、永鳥家に兵吾郎が押しかけたときも。
山の中を迷わずに、赤羽くんが池のところまで来たときも。
人工衛星に告げ口されてたってわけね。
盗撮されるより気分わるいわ。
……そんなもの。
まくら元に置かれていた携帯を手に取った。
兵吾郎と赤羽くんの形相が、ギシリと固まる。
「お、お嬢、何を……」
「その携帯は……」
――バキッ!!
「あああ……!!」
「きれいに真っ二つに……」
画面は粉々に砕かれ、中身の機械は火花を散らし。
小さな破片の数々が、足元に転がっていく。
これでおーけー!
GPSがどれかはわからないけど、完全に壊れたでしょう。
「お、お嬢……いいんですか、壊しちゃって」
「大切な連絡先も入っていたのでは?」
「どうせここじゃ使えないじゃん。無くても一緒だよ」
あたしの部屋だけWi-Fiは飛んでないし、電話をかけても電波がつながらない。
これまで何度も試してきたから重々承知。
この空間では、文明の利器もしょせんガラクタ。
魁運と話したくても、話せない。
不便だ。卑怯だ。悪質だ。
あたしからはすべて奪っておいて。