「本当にすみません。
俺が気を付けてればこんなことにはならなかったのに…」

「快、謝らなくていいから」

「でも俺のせいで…!」

「快はなにも悪くないじゃん。
快が気にすることじゃないよ」

「そんなの無理です。
気にしますよ」

「…でも、ちゃんと言っといたから」

「え?」

「快が誰と付き合おうが、誰と仲よくしようが、
快が決めることだからって。

私、別に絡まれてもいいよ。
その都度そうやって伝えていくから。
そうやって、少しでも快に平和に過ごせるように協力するよ!」

「…なんで、そこまで…」

「快は、もう大事な後輩だから。
せっかく仲良くなったんだもん。
絡まれるのが怖くて、話せなくなる方が私は嫌だよ」


私がそういうと、快は顔を下に向けた。
その表情はもう見ることができないけど、私は明るく続けた。


「ね、だから大丈夫。
快はなんにも気にしなくていいよ」


そういって、私はもう歩き出した。
明日も大学だもん。早く帰らなきゃ。

そう思った矢先、私の腕はまた掴まれて、
快の方に体が向いたと思ったら
がっつり、快に抱きしめられて


「んっ、…やっ!」


キス、されていた。


「な、に…
なにしてんの、快…」

「莉乃さん、俺のこと殴ってください」

「え…?」

「俺そしたらきっぱり諦めるんで」

「は?え、なに
意味わかんない…」


快は、ずっと下を向いたまま
この暗闇では、もう表情は全然見ることができなかった。


「…意味、本当にわからないですか?
俺こんなにアピってんのに」

「…え?」

「俺、莉乃さんのこと好きなんです」

「…え!?」

「俺、前から莉乃さんのこと見てました。
この店通って、子供に明るく厳しく優しく接する莉乃さんに、ずっと憧れてたんです。
だからこの店でバイトすることにしたんです。

莉乃さんと仲良くなると、どんどん好きになっていきました。

俺も驚きましたよ。俺女不信なのに、嘘だろって思ってました。
…でも、知れば知るほど、莉乃さんは今までの女たちと違って…

…本当に、すっげぇ好きなんです」

「か、快…」