着替えを済ませて、私は呼吸を整えた。
まぁ別に乱れてたわけじゃないんだけど…

ちゃんと、いつも通りでいる。
快といつも通りいたいから。

とりあえず言い訳は、美優のを利用して、ゼミにでも行ってたことにすればいいか。


よし、これで完璧。


私は心を決め、更衣室を出た。
サービスカウンターで佐野さんに挨拶してから、私は店の裏まで歩くと、そこにはもう快がいた。


「ごめん、お待たせ」

「いえ」

「あの、ごめんね?お昼行けなくて。
急にゼミ集まることになっちゃって」

「え?あ、あぁ…
それはいいんです。俺気にしてませんから」

「え、そうなの?
なんだ…私てっきりすっぽかしてなんの連絡もしなかったことを怒ってるのかと思ったよ」


なんだ、よかった
と意気揚々話は終わりだと思って、歩き出したんだけど


「莉乃さん!」

「え、え!?
っ、た…」


いきなり腕を掴まれ、私は壁へと押し付けられた。
決して強くやられたわけじゃないんだけど、昼間強く壁に押し付けられたから、肩に痛みが走った。


「あっ、すみません!
痛かったですか!?」

「あ、ううん
平気だよ」


私がそう言って快の顔を見ると、快はすごく真剣に、だけどすごく表情は歪んでいた。


「…すみません、俺のせいで痛めましたよね」

「え、違うよ!?
そのくらいで痛くならないよ」

「…でも背中とか、どっか痛めてますよね」

「…そんなことないよ。平気」

「莉乃さん、本当にすみません」

「…なに、謝ってるの
快はなんにもしてないじゃん」

「でも俺のせいで絡まれてますよね?女たちに」


えっ…?
え、どうして知って…


「そ、そんなことないよ
なにもされてないって」

「莉乃さん、俺聞きました。
昼間、莉乃さんのお友達に」

「え?」

…って、藤澤か…
え、でもなんで藤澤は快が原因って知ってんの…?