とりあえず私はバイトの支度をして、バイトに向かった。

もう、働いて気を紛らわせるのが一番だと思ったから。


「……莉乃ちゃん、今日元気ないね?
なにかあった?」

「佐野さん…
いやなんか、大学でちょっといろいろあって疲れて…」

「そっか、学生も大変だなぁ」


それでも、レジに入ればなにも気にすることなく仕事に集中できた。
お客さんに笑顔で接して、お客さんを見送る。

そしていつものまりちゃんが今日もご来店だ。


「まりちゃん!」

「お姉ちゃん!」


かわいいかわいいまりちゃんの笑顔を見てると、もう悩みも吹っ飛ぶ。
子供が好きすぎて、私も早くお母さんになりたいとすら思える。


「あ、まりちゃん!」

「こうきくん!」


っ、と…

いつも通りまりちゃんにハグしようとしたら、まさかの違う方向に行ってしまった。
え、と…こうきくんとは…?


「すみません、まりがまた…」


そういいながらお母さんが近づいてきた。


「いえ。
あの、こうきくんってお友達ですか?

「えぇ。幼稚園の。
一応、この子たち両想いなんですよ」

「え!はやい!」

「ね。今の子たちはみんないろいろ早いからついていけないわ…」


両想い、か。
この子たちはいいなぁ。まだいろんなしがらみがなくて。

私なんて、付き合ってるとかそんなんでもなんでもないのに
ただの先輩後輩関係なのに、髪の毛掴みあげられたんだから…


「あ、快はやいじゃん!」


佐野さんのその声に、私の体は固まった。
そして混んでもないのにすぐにレジに入った。

今日はまりちゃんも私に用なしみたいだから。