今日もわたしは店へ訪れた。
ドアを開け、いつも通り中へはいるとマスターの隣にあの女性が並んでいた。
マスターとお揃いの黒いエプロンをつけた女性が駆け寄ってくる。
「いらっしゃいませ。いつもの席でよろしいでしょうか?」
幸せそうな笑みでわたしを席へ案内してくれた。
どうやらわたしが常連であることを知っていたようだ。
メニュー表を差し出してくれた女性の薬指には銀色のリングがはめられていた。
わたしは持ってきていた新聞を広げ、次にマスターの手元をこっそりと観察した。
そこにはやはり女性と同じリングが薬指にあった。
そうか、そうか。
やっと実ったのか。
良かったじゃないかマスター、おめでとう。
わたしはいつも通りコーヒーを頼んだ、
こぼれる祝福の笑みは新聞で覆いながら。