ヴァン・ダインではコーヒーとサンドイッチが昔からの人気メニューであったが、

彼の代になってからもしっかり味を受け継ぎながらも、試作を重ねているようであった。



時々わたしも試作をいただくことがあるので彼が研究熱心な青年であることはよく知っている。



 落ち着いた雰囲気も店の料理もわたし好みだ。そういう所を評価して通っている常連も多いと思う。


わたしを含めた、常連たちはそれ以外にも興味をそそられていること、


それはヴァン・ダインに度々訪れる女性にマスターがほの字だということが、気になるところであった。



 カウンターの一番端の席にはいつも予約の札が置いてあった。


よっぽど込み合っている時以外はその席には誰も座らない。


そこに座るのはたった一人、あの女性だけだ。