『明彦君がこの世界に来た意味って、この世界の人たちを幸せにするためだって、リリーは思うよ。

だからリリーは、明彦君と一緒に最後まで戦いたい。

明彦君と会えなくなったら悲しいけど、リリーたちはベルミータ国の人たちを救わなくちゃいけないから。

それがリリーたちの大切な仕事だと思うから』



北のお城が見える草原で僕たちが休んでいるとき、リリーは元の世界に戻ることを悩んでいる僕にこう言ってくれた。



リリーはいつだって、僕に優しい僕の味方だった。



自分に自信がないときに、僕を励ましてくれたのもリリーだし、僕のことを強いって言ってくれたのもリリーだった。



この異世界に来てから知り合った僕とリリーの付き合いは時間にしたら短いかもしれないけど、僕はずっと前からリリーと友達だったような気がしてならない。



友達がいなかった僕は、ずっと前からリリーみたいな子と、友達になりたかったんだ。



誰よりも優しくて、僕を励ましてくれて、僕を認めてくれたそんなこの世に二つとない存在と……。



僕は剣を振り上げ、無我夢中でダーギルに斬りかかった。



「ダーギル!

リリーから離れろ!」



僕は全身全霊をかけて、この剣の一振りにかけていた。



でも僕のそんな思いは、ダーギルのたった一撃の魔法の打ち砕かれた。



「消え失せろ!

衝撃系の魔法、インパクト!」



ダーギルが魔法を唱えた次の瞬間、僕はダーギルの右手から放たれた衝撃波で体を吹き飛ばされていた。



そして僕の体は十五メートルほど先にあった壁に激しくぶつかり、僕は身体中に痛みを感じながら、ダーギルの魔法の威力を身を持って体験していた。



(何て魔法だ……。

僕たちじゃ、ダーギルには勝てないのか……。

僕たちは最強のパーティなはずなのに……)



僕はリリーを助けに行きたかったが、体がすぐには動かなかった。



僕は遠く離れてしまったダーギルとリリーを見つめながら、リリーが無事でいてくれることを願っていた。