ダーギルの周りを巨大な竜巻が取り囲み、ダーギルは身動きも取れぬままに、リリーの魔法の餌食になると僕は思った。



そして今度こそ、リリーの強力な魔法がダーギルを倒すだろうと。



でも、そんな状況の中でもダーギルは余裕の笑みを浮かべて、少しも危機感を感じていないように思われた。



ダーギルのその余裕の態度は本気なのか、それともハッキリなのか、僕にはそれがよくわからなかったが、ダーギルは巨大な竜巻に囲まれている中、笑いながらリリーにこう言った。



「なかなかの魔法だな、魔法使いの小娘。

だが、そんな魔法はこのダーギル様には通用せん。

オレ様と貴様の実力差を今から教えてやろう」



ダーギルはそう言うと、背中に生えている大きな黒い翼を広げて、空を飛び、体を左右に旋回させながら迫ってくる竜巻のすき間を縫うようにくぐり抜けた。



そしてダーギルはリリーの魔法をすべてかわすと、リリーの前に降り立った。



小柄な女の子の魔法使いと、体長四メートルのダーギルが近くで向かい合ったその様子は、大人と子供のシルエットの数倍の差があった。



僕はリリーの目の前に立つダーギルに脅威を感じて、リリーに向かって叫んでいた。



「逃げろ、リリー!

そいつは危険な相手だ。

真っ正面から戦っちゃいけない相手なんだ!」



僕はダーギルの前で無力な自分の能力を知りながらも、剣を片手にダーギルに向かって全力で走っていた。



このままじゃ、リリーが危ない。



僕がリリーを救わなくちゃ……。