病んでる僕と最強の勇者たち

「よくもリリーの魔法を……。

リリーの魔法は最強なのに……。

リリーの魔法は絶対に負けないのに……」



僕は後ろの方から聞こえてきたリリーのその声の方に目を向けた。



するとリリーは、怒っているときだけに出す禍々しい黒いオーラを身にまとい、ダーギルをにらんでいた。



そしてゆっくりとダーギルの方に歩み寄り、魔法の杖をダーギルの方に突き出した。



「リリーのデスファイヤーを上回ったからって、いい気になるな！

リリーの魔法はパワーだけじゃないんだから。

リリーにはたくさんの魔法があるんだから」



(自慢のデスファイヤーを吹き飛ばされたリリーが怒ってる。

リリーは本気だ……。

リリーはどんな魔法でダーギルを攻めるつもりなんだろう？)



僕がそう思って、リリーの動きに注目していたとき、リリーは魔法の杖を天に掲げ、僕の知らない新たな魔法を唱えていた。



「リリーはパワーだけの魔法使いじゃない。

リリーはこの魔法でダーギルを倒す。

分身魔法、トリプル！」



リリーがそう言って魔法を唱えると、リリーの体から、あと二人のリリーが現れ、三人のリリーがダーギルの前に立ちはだかった。



そして、その三人のリリーは、ダーギルに向かって同時に言葉を発していた。



「とっても強いリリーが三人もいるんだよ。

ダーギルは絶対にリリーに勝てないんだから」



僕は三人に別れたリリーを見つめながら、リリーの魔法の奥深さを知った。



リリーが自分のことを世界最強の魔法使いと言い続けている理由と自信を、僕は今さらながらに理解していた。



僕はまだリリーという魔法使いの底を知らない。



リリーの魔法ならきっとダーギルを倒せる。



僕がリリーの魔法に大きな期待を寄せているとき、リリーはついに自慢の最強魔法を唱えていた。



「この魔法でダーギルを倒す！

風系の最強魔法、ビッグトルネードロンド！」



三人のリリーが同時に魔法を唱えると、お城の最上階のフロアーを埋め尽くしてしまうほどのたくさんの竜巻が現れて、ダーギルへと襲いかかった。



さすがのダーギルも、リリーのこの魔法を回避するのは不可能だ。



僕はそう思いながら、戦況を見つめていた。