「あいつは、いつもこうして花を持って見舞いだとやってくる」

咲耶姫様は私からキキョウを受け取ると、ため息混じりにポツリと呟いた。そして無造作にこたつの上に置く。
ふんとそっぽを向く咲耶姫様だが、そこに悪意はまったく感じられない。むしろ好いているような。嬉しいのに素直に嬉しいと表現できない、そんな感じが漂っている。

「……もしかして彼氏さんですか?」

私の問いかけに、咲耶姫様はビクッと肩を震わせ、ほんのり顔が赤くなる。そして困ったように視線が泳いだ。
とんでもない乙女感を出す咲耶姫様が可愛らしく、なぜだかこちらが恥ずかしくなってしまう。
この反応、私の第六感間違っていないかもしれない。

「……じゃあ、好きな人です?」

咲耶姫様の顔がさらに赤くなった。
神様でもそんな反応するんですね。
咲耶姫様の反応がいちいち可愛くて、私は段々とウキウキしてしまう。

「もしかして迫られてる、とか?」

畳み掛けるように問うとギロリと思い切り睨まれ、その凄みにすぐさま私は畳に頭を押し付け謝った。

「すみません、調子に乗りました!」

いや、本当に。
神様相手に調子に乗りすぎだ、私。
これはもう酔ってるってことにしてください。
ここはひとつ無礼講で。
何卒、なにとぞ!

心の中で謝罪するも、咲耶姫様からの応答はなく、私はそろりと顔を上げる。

「ああっもうっ」

そこには、顔を真っ赤にして両手で頬を包んでいる咲耶姫様がいた。その瞳は若干潤んでいるように感じる。

咲耶姫様、分かりやすいにも程があるし、その反応は可愛すぎます。
と、私は心の中でじたばたする。
調子にのってすみませんと謝ったばかりなのに、私の好奇心はまた調子よくムクムクとわいてきた。

「咲耶姫様の恋愛話も聞きたいなー…なんて。ほら、女子会だし。ささ、飲んで飲んで」

私は咲耶姫様のぐいのみグラスに日本酒を注いだ。トクトクと良い音がする。
咲耶姫様はおもむろに手に取ると、それをしばらく見つめたあと、一気に煽った。