「あの、生まれつきなんですか?」

「え?」

「痣です。あ、すみません、言いたくないですよね、気にされてるのに」

「いや、これは……」

咲耶姫様が何かを言おうとした時、急にガタガタと襖が震え出し、突然のことにビクッと肩が震えた。二人して揺れる襖の方を見やる。

「地震?」

「いや、違うな」

ビクビクする私とは反対に、咲耶姫様の声は冷静だ。恐怖に思わず咲耶姫様の袖を掴んだ。
何だろう、今度こそ幽霊とか?
やっぱりここは別の世界とか?

私が考えるより早く突然パーンと勢いよく襖が開き、大きな声が響く。

「元気にしておるか!見舞いだ!」

そこには厳つい男が立っていた。咲耶姫様と似たような装束を纏って右手に何かを持っている。それに何だかとんでもなく熱いオーラを漂わせながら仁王立ちだ。
もしかしてこの方も神様なのだろうか。

「誰だ?俺の咲耶姫と何をしている?」

「ひっっっ!」

ギロリと睨むその目力の強さに私は小さく悲鳴を上げ、尚更身を小さくした。
怖い。怖すぎる。
咲耶姫様は私を後ろ手に庇うように立ち上がり、厳つい男の前に立ちはだかる。
オーラだけなら咲耶姫様も負けていない。

「帰ってくれ。今日は客人が来ているんだ」

「なんだと!俺より客を取るのか!」

「そうだ!女子会をしているのだ。」

「じょしかい?なんだそれは?」

「大事なことなのだ、邪魔するな」

ピシャッ。
食いつかんばかりの男に咲耶姫様は冷たく言い放つと、彼を押し出しそのまま襖を閉めた。

急に静かになる部屋。
空気がゆっくりと元に戻っていく。
汗がたらりと落ちた。