水瀬の家は学校から歩いて30分かかるかかからないか。
歩くには少し離れているものの、おじいちゃんが過保護すぎて自転車に乗らせてくれないの!と前に文句を言っていたのを思い出した。

梅雨が明けたばかりの昼下がり、肌に照りつける日差しは痛くて自然と汗が出てくる。

信号待ちで、ふと目に入った町の掲示板に貼られた「花火大会」の文字に、吸い込まれた。いつだったか颯太と陽菜が誘ってくれたあの花火大会だ。

水瀬も同じものを見ていたらしく、
「花火大会かぁ、、いいなぁ」
と呟いた。その横顔がなんとも言えない哀しい表情をしていて、どこか親近感を抱いて。
「一緒に行く?」
信号が青になると同時に俺の口から出た言葉に自分でも驚いた。

「え?」
水瀬がこちらを見て首を傾げる。

「あ、、いや、違くて…
夜なら補修ないだろうし陽菜も颯太も佐野さんも、これるんじゃない?って思って!」
慌てて早口でそう付け加えると水瀬はふふっと笑って一歩また一歩、踏み出した。

「赤になるよ?」
さっきまでの表情とは打って変わって無邪気な笑顔でこちらを振り返ってそれだけ言って走り出した。
予言したかのように信号機がチカチカしはじめ俺は慌てて追いかけた。