帰り道。
なぜか俺はチャリを押していて、隣には水瀬が歩いている。
何か話をするわけでもなくお互いに口を閉ざしただひたすら水瀬の家に向かって歩く。

なぜか、と言ったけど一緒に帰っている理由はわかりきっている。

あの話し合いの後、佐野さんは耀が迎えに来て楽しそうに帰って行った。
陽菜と颯太は言わずもがな2人で帰って行く。
そうなると俺と水瀬が残る。

それは野崎がいてもいなくても変わらないのだろう。彼女にはいつも迎えが来ているからな。

3人を送り出した教室で帰ろうと鞄を持って席を立つと水瀬が「一緒に帰らない?」と消えかかりそうな声で話しかけてきた。

久々に料理がしたくて帰りにスーパーに寄ろうと考えていたけれど、今にも消えそうで震えた水瀬の声を聞くと放っておけなくなった。

お互いに何か話すわけでもなく、
玄関を出てチャリ小屋へ俺のチャリを取りに行き、
ただ水瀬の家へ向かって歩いている、
その途中が今ってわけ。